Share

第46話 想うほどにつらくなる

Author: 甘梨鈴
last update Last Updated: 2025-07-18 17:00:16

  

  

  

 ベッドに入っても、なかなか寝付けなかった。

 何度も寝返りを打つので、そのたびにベッドが軋む。

(あ、ナタリナが起きちゃうかも)

 ナタリナは隣の部屋で寝ているのだ。

 耳を澄ましてみたが、物音や人の気配はしなかった。

 安心して、息を吐く。

(今日も疲れたな……)

 ゆっくり休めるはずだったのに、書類仕事ばかりして、目も疲れた。

 ふだんのエマなら、あれくらいの量は何でもないが、前日にレオナールから折檻を受けたせいだろう。

 そのときのことを思い出すと、胸が苦しくなる。

  嫌な記憶を忘れたくて、ルシアンのことを思い出した。

(ルシアン様っ)

 王宮の庭園で、明るい日差しの中をルシアンと歩いた。二人きりでお茶を楽しんで、その後は……欅の木陰に隠れて、あられもない姿を晒してしまった。

 ルシアンのしなやかな手が、エマの尻をもみしだき、昂ぶりに触れて、何度もイかされて……。

「ンッ、……ぁぁっ」

 躰が熱くて、気持ちよくて。

 ルシアンの手にすべてを任せて、喘ぎながら果てた。

 みっともない姿を見せてしまったのに、ルシアンはエマを「可愛い」と言ってくれたのだ。

「はぁんっ、ァッ、ルシアンさまっ」

 あの甘い快楽を思い出すと、躰が熱くなってくる。

 半身がゆるりと勃ちあがり、エマは夜着の裾をめくって、両手で握りしめる。

「んぁぁっ、ん、ぁぁッ」

(声、聞こえちゃうッ)

 エマはシーツを噛んで声を抑え、昂ぶりを扱いた。

「んぅぅッ、ッ、ふぅぅっ」

 腰のあたりが熱くなり、蕾まで疼いてくる。

 昨日、ルシアンが最後まで触ってくれなかった蕾。そこからトロリと愛液がこぼれおち、エマは思わず指を突き入れた。

「っ、ぁぁんっ!」

 ぐちゅ、と指を飲みこむ蕾に、エマの躰がさらに熱くなる。

(ぁっ……気持ちいいッ……ぁぁ
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる   第47話 嬉しい接待

     ルシアンは嫌気が差して、途中で同僚に押しつけて戻ってきたのだが、王族という立場にいながら、あれほど薄っぺらい人間だとは思わなかった。 「あんな奴が、エマの婚約者なのか」  エマは、さぞ苦労しているだろうと同情する。 (あの男に、エマはもったいない)  ルシアンは、本気でそう思った。  ランダリエ王家のしきたりによって婚約したと聞くが、明らかに釣り合いが取れていない。  ルシアンを惹きつける、あの可憐な白い花が、レオナールの腕に抱かれていると思うと激しい怒りを覚えた。 「ッ……」  ダンッと音を立てて、杯をテーブルへ置いた。 (いや……あの男が、エマを正当に扱うだろうか?)  最初の挨拶の場でも、パーティでも、レオナールはエマに対して冷たい態度を取っていた。噂通り、聖樹であるエマを冷遇しているのは間違いない。そんなレオナールの態度を、聖樹に対する冒涜だと眉をひそめる貴族もいる。が、王子相手に進言する者はいないようだ。 (エマは、抑制剤も服用していなかった)  外国から客人を迎え接待する立場で、服用を忘れるとは思えない。鎮静剤を渡した時も、ルシアンが驚くほど喜んでいた。 (薬を取り上げられたのか? オメガに必須の薬を?)  抑制剤がなければ、発情期はかなり苦しむはずだ。  お節介かもしれないが、次に会った時は、エマに抑制剤を渡そうと思った。 「これのお礼だと言えば、受け取ってくれるだろう」  ルシアンは小さなお守り袋を手のひらに乗せる。  四角い形で、中にはカードが一枚入っているだけの薄っぺらいものだ。  曲げてしまわないように注意して、中の紙を取り出す。  あまり質の良い紙ではないが、インクで綴られた文章は、柔らかく温かみのある文字だった。  ランダリエでは有名な、祝福の一節らしい。  『昼』は貴方の道が輝き   『夜』が貴方の愛を包む   『星』は幾千の祝福を告げ   『天』は幾万の希望を贈る

  • 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる   第46話 想うほどにつらくなる

       ベッドに入っても、なかなか寝付けなかった。  何度も寝返りを打つので、そのたびにベッドが軋む。 (あ、ナタリナが起きちゃうかも)  ナタリナは隣の部屋で寝ているのだ。  耳を澄ましてみたが、物音や人の気配はしなかった。  安心して、息を吐く。 (今日も疲れたな……)  ゆっくり休めるはずだったのに、書類仕事ばかりして、目も疲れた。  ふだんのエマなら、あれくらいの量は何でもないが、前日にレオナールから折檻を受けたせいだろう。  そのときのことを思い出すと、胸が苦しくなる。 嫌な記憶を忘れたくて、ルシアンのことを思い出した。 (ルシアン様っ)  王宮の庭園で、明るい日差しの中をルシアンと歩いた。二人きりでお茶を楽しんで、その後は……欅の木陰に隠れて、あられもない姿を晒してしまった。  ルシアンのしなやかな手が、エマの尻をもみしだき、昂ぶりに触れて、何度もイかされて……。 「ンッ、……ぁぁっ」  躰が熱くて、気持ちよくて。  ルシアンの手にすべてを任せて、喘ぎながら果てた。  みっともない姿を見せてしまったのに、ルシアンはエマを「可愛い」と言ってくれたのだ。 「はぁんっ、ァッ、ルシアンさまっ」  あの甘い快楽を思い出すと、躰が熱くなってくる。  半身がゆるりと勃ちあがり、エマは夜着の裾をめくって、両手で握りしめる。 「んぁぁっ、ん、ぁぁッ」 (声、聞こえちゃうッ)  エマはシーツを噛んで声を抑え、昂ぶりを扱いた。 「んぅぅッ、ッ、ふぅぅっ」  腰のあたりが熱くなり、蕾まで疼いてくる。  昨日、ルシアンが最後まで触ってくれなかった蕾。そこからトロリと愛液がこぼれおち、エマは思わず指を突き入れた。 「っ、ぁぁんっ!」  ぐちゅ、と指を飲みこむ蕾に、エマの躰がさらに熱くなる。 (ぁっ……気持ちいいッ……ぁぁ

  • 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる   第45話 友人に

     シーツの上に腰掛けると、ナタリナがティーカップを差し出してくれる。  花の香りがエマを優しい気持ちにした。 「ナタリナのハーブティーだね」 「はい。これを飲めば、よく眠れますよ」 「うん」  ナタリナが淹れてくれるハーブティーは、疲労回復にいい。  香りもよく、これを飲むとぐっすり眠れるのだ。 「エマ様の体調も安定しているようで、良かったですわ」 「ルシアン様が下さったお薬のおかげだね」 「ええ。帝国にあのような薬があるなんて存じませんでした。また分けて頂けると良いのですが」  ナタリナが切実な面持ちでつぶやく。  レオナールに抑制剤を取り上げられたせいで、エマは発情期のたびにひどく苦しむ。そのうえ、今回は媚薬を使って、無理やりエマを発情に近い状態にしたのだ。エマを想うナタリナが、ルシアンの薬を望む気持ちもよく分かった。 エマも、ルシアンの薬に助けられたので、もっとたくさん欲しいと思う気持ちは同じだ。 「でも、ルシアン様は親切心で分けて下さっただけだから。迷惑はかけられないよ」 「ですが、エマ様。デイモンド伯爵は、エマ様によくして下さるではありませんか。帝国の方ですが、『聖樹』への偏見もないようです。エマ様が望めば、きっと手助けして下さるはずです」  ナタリナが、エマの顔を覗き込む。  エマに近づく相手を厳しく見定めているナタリナだが、ルシアンへは好意的だ。  始めは、ルシアンに気をつけるよう忠告してきたのに、高価な鎮静剤を分けてくれたことで、株が上がったらしい。 (ルシアン様は、優しい方だから)  家族同然のナタリナが、ルシアンを認めてくれたようで嬉しかった。 「でも、図々しいって思われないかな?」  ルシアンの親切を、好意と勘違いしてはいけない。  エマはずっとそう戒めてきた。 (僕が、抑制剤を飲んでないのを、心配してくれただけ)  静香石(せいこうせき)の調子を見てくれたのも、エマの熱を解放するために触れてく

  • 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる   第44話 押しつけられた仕事

     王太子の計らいにより、エマは一日休むことになった。  しかし、エマに与えられた休息は、わずかな時間だった。  事の次第を聞いたレオナールは激怒し、嫌がらせのように大量の仕事を押しつけてきたのだ。  レオナールの補佐官が、書類の山を持ってやってきた時には、内心で「やっぱり」と思った。  今までも、レオナールは自分の仕事の大半をエマに押しつけてきた。  エマの部屋にある書き物机には書類が積み重なり、本棚にはぎっしりと本が納められ、ペンとインクだけは十分に用意されている。 「はぁ……」  エマのことを平民と罵るくせに、その平民に仕事を押しつけ、自分は放蕩三昧だ。  仮にも王子なのに、富と権力だけを享受し、それに伴う仕事や責任は部下に押しつける。  レオナールの為に水面下で実務をこなすのは、エマだけではない。  エマ以上に負担を強いられているのが、レオナールの執務官だ。優秀な人なのに、下級貴族というだけで、レオナールお気に入りの筆頭補佐官や上級補佐官にすべての手柄を横取りされている。  エマや執務官のおかげで、レオナールとその取り巻きは甘い蜜を吸い、実力以上の評価を得ていた。  貴族社会とはそう言うものだが、やりきれない気持ちだ。 (考えるとむなしくなるから、止めよう」  エマは暗い気持ちになる前に、目の前の書類を片付けることにした。  レオナールが管理する領地から上がってくる税収や物資の報告を受け取り、内容を精査して王宮の会計と備蓄に反映させる。  領主からの、納税状況や物資納入報告書に目を通し、問題のない報告書と、補佐官に直接確認してもらう報告書により分けていく。  書類の山に埋もれながら、エマはふと手を止める。 「また、ワイール領の数字が少ない」  ワイール領は、国境に近い位置にある、サファイア鉱山を所有する領地だ。  領地の広さも、鉱山としても中規模だが、質の良い温泉が出るので、貴族の保養地としても人気がある。  採掘地からの月報では、今月も順調に金が産出さ

  • 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる   第43話 ナタリナの優しさ

    「おい、見てみろ。メス犬がさっきからよだれを垂らしてるぞ」 「レオナール様へ媚びているのでしょう」 「浅ましいメス犬だ」 「仰るとおりです。レオナール様」  従者はレオナールのグラスにワインを注ぎ、給仕を済ませてから、再びベッドへ近づいた。  エマを見下ろし、蛇のように醜悪な笑みを浮かべる。 「レオナール様。このメス犬が、レオナール様への無礼に許しを請うまで、じっくり躾けましょう」 「コイツは物覚えが悪いからな。しっかり頼むぞ」 「お任せ下さい」  ククッと笑う嫌らしい声に、エマの体が震える。  この男は、エマをいたぶることに愉悦を感じているのだ。 「ッ……ぃ、イヤッ……ッ」 「簡単にイけると思うなよ?」 「ぁぁっ……ッ、ひぁぁぁッ!」  躰の中で暴れる熱に悶えながら、エマは静かに涙を流した。 +++  エマは手足を拘束され、半身に触ることを許されないまま、焼け付くような快楽に屈した。  躰の熱を解放したい一心で、自身を卑下する台詞も、レオナールへ服従する台詞も吐きだした。  悪魔のような男達に弄ばれ、嘲笑される。言葉や態度で蔑まれるうちに、エマの心はすり減っていった。  地獄が終わったのは、一時間ほど経った頃だ。 「ちっ、ここまでか」  レオナールは用事があるらしく、意外にもあっさり出て行った。  枷を外され、エマは自由を取り戻す。  だが、レオナールたちが部屋を出て行くまで、身を丸めたまま半身には触れないように耐えた。 「ッ、ぅっ……、ぁ、はぁっ」 「エマ様っ!」  ナタリナの声が聞こえたとたん、エマは昂ぶりに手を伸ばす。 「ぁぁッ、ッ、あぁぁッ!!」  軽く扱いただけで精が弾け、ピクピクと躰が震える。  フワリとシーツが体を覆い、柔らかな声が届いた。 「エマ様。私は隣の部屋におりま

  • 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる   第42話 媚薬の効果

     だがエマは、もう従者など気にする余裕がなくなっていた。 「ぁぁんっ、はぁぁっ、ひゃぁぁッ!」  逃れようと悶えれば、敏感になった肌にシーツが擦れ、その刺激だけでエマの昂ぶりが頭をもたげる。  蕾からは愛液があふれて、収縮を始めた。  淫らに喘ぐエマを、従者は蔑むように見下ろす。 「アァァッ! 熱いっ、ンンッ……いやぁぁッ」 「どんな気分だ? 汚らわしいオメガめ」 「はぁぁんッ、んぁッ、ぁぁ」 「みっともなく腰を揺らして、誘ってるのか?」 「ッ、んんっ、ち、ちが……ぁ」 「ならば、物欲しそうにヒクつく穴はなんだ? 下品な汁を垂らして、媚びているつもりか?」 「うぅッ、……そ、そんなッ……んっ、ぁ、ひぁぁんっ」  ビクビクと躰が跳ね、愛液がとろりとあふれる。  従者の言葉を肯定するような躰の反応に、嘲笑が上がった。 「淫乱なメス犬め! お前の躰は、実に正直だ」 「ぅぅッ……ちが……んぁっ」  エマは違うと首を振るが、従者の嘲りは止まらない。 「さあ、お前がどれだけ淫乱で罪深いメス犬なのか、レオナール様へ懺悔して詫びろ」 「ァッ、はぁッ、んん……ッ」 「言え、メス犬!」  怒鳴りつけられ、ビクッと震える。 (ぅぅッ……こんな、ひどい……ッ)  躰は火照るように熱く、薬で煽られた疼きが、エマの思考を奪ってくる。  卑劣な男たちに従うのは屈辱だが、この状況で逆らえるはずがなかった。 「っ……わ、私はッ、んんっ、淫らで、はしたない、メス犬ですッ……」 「ふん。分かってるじゃないか」  レオナールは唇の端をつり上げ、嘲るようにエマを見下ろした。 「それで、どう詫びるんだ?」 「……ッ、め、メス犬の、私が……ぁんっ、殿下の……んぁっ、婚約者でッ、ぁぁっ……申し訳、ありませんッ」 「婚約者だと?」  従者の声が一段と低くなる。  無造作に髪を掴まれ、怒りの形相で睨まれた。

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status